受賞企業紹介

最優秀ものづくりリーダー決まる!
工場の現場改善・部下育成の事例発表大会「第34回第一線監督者の集い:名古屋」
最優秀事例賞(大野耐一・杉山友男賞)にダイキン工業、トヨタ自動車に決定!

製造業のものづくり現場における管理・監督者が、工場の改善活動や人材育成の取り組みなどを発表する「第34回 第一線監督者の集い:名古屋」を、2016年1月21日(木)・22日(金)の2日間、愛知県産業労働センター(名古屋市中村区)で開催しました。

1日目、2日目ともに8人ずつが登壇し、活動内容や苦労した点、成果を発表。各日400人を超える聴講者による投票の結果、最も多くの得票数を得た最優秀事例賞(大野耐一・杉山友男賞)に、大会1日目はダイキン工業(株)、大会2日目はトヨタ自動車(株)に決定しました。

大会1日目
ダイキン工業株式会社 
滋賀製作所 空調生産本部 滋賀製造部 製造第二課 チーフ 杉浦 智行 氏
「これが我々の現場力~当たり前を変えたファンのバランス検査

ダイキン工業_杉浦氏

ダイキン工業滋賀製作所は、空調機器の部品から製品までの一貫生産を担い、室外機300種、室内機500種を混合生産し、年間約100万台を生産している。
杉浦さんは、室内機で送風の役割を果たす「クロスフローファン」の組み立てを担当している。同社へは、はじめ派遣社員でしたが、その後には有期間社員となり、平成23年に登用試験を受けて正社員となった経歴を持つ。
杉浦さんは、クロスフローファンのバランス検査を無くすという課題に取り組んだ。
検査測定し、バランスウェイトを取り付け重さの偏りを調整することは、他社でも必要不可欠で当たり前の工程とされていた

しかし、「検査は何のためにやると思う」「検査を何度したって製品そのものは良くならないだろう」という部長の言葉をきっかけに、自分の職場での改善を考えていた杉浦さんは、「バランス検査を無くしたら楽になるなあ」という雑談中の一言によって、杉浦リーダーでの取り組みが即決する。

経験も知恵も少ないなか、まず改善強化に取り組む部門に相談し、関心を示してくれた先輩社員が一緒になって取り組んでくれるという協力者を得る。さらに必要関係部署に協力をお願いするも断られ、「面倒なことは全部僕がやりますから」「どこもやっていないことなのでやりましょう」と幾度も幾度も頭を下げ、やっと了解を得て本格的にスタートできる。

スタート前は200台中2台しか一発合格品はなし。まず、主要4単品部品を測定することに着手したくとも、測定機器がなく、測定機器から開発しなければならなかった。これまでにない測定機器で断られる次第であった。諦めず幾度も幾度も働きかけ、やっと杉浦さんの熱意が通じて職人さんが引き受けてくれ、測定器ができあがる。測定結果に基づいて、部品の精度を上げる対策にトライ&エラーを繰り返して、部品の精度向上にたどり着く。
さらに、部品を組み立てる超音波溶接機をミクロン単位での精度向上にも取り組み、一発合格品の精度が急上昇するが、これでトライ&エラーの継続は留まらず、さらに一発合格品率向上のために、機能部品の改良にも取り組んだ。こうした改善の積み重ねによって、クロスフローファンの一発合格品は、200台中187台までに向上することに成功した。

この取り組みを通じて、杉浦さんは、4つの大切な行動が見えたという。1つめは、やってみること。当たり前として納得してしまっては、視野を狭めてしまうこと。2つめは、人を巻き込むためには、自らがチャレンジする姿をみせること。3つめは、愚直に継続すること。4つめは、失敗を手掛かりにかえること。と指摘する。
この学びが第2、第3の成果につながると確信をして、自分らは最終目標に向けて取り組みを続けたいと締めくくった。

【受賞の感想】

正社員、監督者としての経験は浅いのですが、仕事には自信を持っていました。しかし実際それが正しいのかという疑問も残っておりました。今回評価していただいて、少し監督者として自信が持てたかと思います。当たり前のことを当たり前のようにすることが一番むずかしいと思っています。それでも、当たり前ということに疑念を向けて取り組んだことが、今回のポイントだと思っています。一人間としても監督者としてもまだまだ未熟ですが、この発表をスタートとして、監督者としてよりよい現場づくりをしてゆきたいと思います。

<講評>株式会社MISアソシエイツ 代表 伊藤育徳 氏(経営コンサルタント)

第一線監督者として非常に難しいテーマにチャレンジしました、極端な言い方をしますと、誰も味方がいない状態のなかで、人を巻き込んであることを成し遂げてゆくという、監督者にとっては、一番不得手なところともいえることを、100%にはまだ達してはいませんが、見事にやり遂げました。2つめとして、次の職場や自分の人生の糧となって飛躍されるのではないかということを感じさせてくれます。

大会2日目
トヨタ自動車株式会社
上郷工場 第1エンジン製造部 12エンジン製造課 チーフリーダー 梶原 睦 氏
「取り戻せ!『自信と誇り』~体験を通じてよみがえった現場力~」

トヨタ自動車_梶原氏

トヨタ自動車上郷工場は、自動車エンジンを専門に、年間139万基を生産。
梶原さんの職場は、排気量3,000CCから3,500CCのV6エンジンの組み立てを担当している。
梶原さんは、学校を卒業して、トヨタ自動車に入社。しかし、数年間は製品を機械にセットするだけの単調な作業で、仕事に誇りも持てず、いつ辞めようかと考えていたという。仕事には精一杯取り組んでいたところ、ライン外も任されるようになり、エキスパート、グループリーダー、海外支援の経験も積み、2011年にチーフリーダーへ昇格。
今の職場へは、2011年にコンベヤラインからAGV(自動搬送機)が台車を引っ張るラインへの大きく変更して1年経過した12年から担当することになり、その当時は、良く止まるラインで、稼働率は目標以下にもかかわらず、メンバーはみな忙しくラインを回すだけで手一杯。ラインが終わると疲れ果てて元気もなく、職場力の衰退は目に余るほどだった。

梶原さんはあるべき姿を、忙しいからこそ職場力向上を目標に問題解決を行い、その過程において、コミュニケーションを図り、チームワークを向上し、技能を磨き、人材育成をすることによって、職場運営の活性化にもつながると考えている。
こうした考えから、活気ある職場を取り戻すために、1年目はチャレンジ、2年目はチームワークという目標を立てて職場力向上に取り組み出した。

1年目のチャレンジでは、デーリーミーティングを立ち上げ、阻害要因別に若手をリーダーに選出し、目標も自分たちで決めるようにした。梶原さんは、失敗してもいいからと支援役に徹し、現地現物で一緒に考え、冗談も交え、若手がチャレンジできる環境づくりを仕掛けた。
AGVの電圧低下によってラインが低下する課題に対して、「バッテリーの状態が見えたら」という若手の一言を拾い上げて、電圧残量の見える化を行い、さらにいつでもどこでも充電できる移動式充電バッテリーまでも開発し、目に見えて効果が出てくる改善を経験したメンバーから、改善ネタが上がるようなチャレンジできる環境ができあがってきた。

2年目に入り、出荷前検査で重大な不良が発覚する。この真因を冷静に考えた梶原さんは、職場運営の3本柱活動が停滞していたことと気づき、自分自身にも責任があると痛感する。メンバー全員に3本柱活動の重要さを粘り強く説き、今回の反省を活かして、細部にわたって見直し、詳細なルールを作り、標準作業にまで落とし込んだ。
さらに、4Sでチームワーク向上をめざし、課をあげて取り組んでもらうように課長にも掛け合い、4S専念時間や4Sデーなどを仕掛け、次第に課全体にまで4Sの徹底も進み場の整備も出来ていった。
こうした結果の集大成ともいえるような難題にも挑戦した。組み立てのメインラインで最も危険度の高い作業を、他の職場を巻き込んで、機械的な縛りと物的対策を考えだし、危険度をAからCへと低減することが出来た。このチャレンジは工場大会でも発表された。

チャレンジ出来る「自信」とチームワークという「誇り」を取り戻し、職場力は目標とおりに向上、活気がよみがえった。

【受賞の感想】

自分と同じような境遇で入社してきた若手を成長させたいという思いでやってきました。挑戦できる環境をつくってあげて、成功を味あわせて成長させるのが僕の役割と思っています。そうすることで、自分の成長もしてゆきたいと考えています。

<講評>株式会社MISアソシエイツ 代表 伊藤育徳 氏(経営コンサルタント)

監督者として、明るい職場をつくる取組みをメインに紹介いただいた。1年目2年目と目標テーマを決めて、いろいろな取り組みを行いました。ベーシックなことから高い目標達成を通じて、人材育成をして、現場を活性化してきた事例です。ルールがない、順守できないという現場では、第一監督者が先頭に立って作り込んでゆかなければなりません。こうしたこともテーマとして取り組んでいます。

第33回「第一線監督者の集い・名古屋」受賞企業

つよい現場には、すごいリーダーがいる!
工場の現場改善・部下育成の事例発表大会「第33回第一線監督者の集い:名古屋」
「杉山友男賞」はトヨタ自動車、「大野耐一賞」はダイハツ工業

製造業のものづくり現場における管理・監督者が、工場の改善活動や人材育成の取り組みなどを発表する「第33回 第一線監督者の集い:名古屋」を、2015年1月15日(木)・16日(金)の2日間、愛知県産業労働センター(名古屋市中村区)で開催。

1日目、2日目ともに8人ずつが登壇し、活動内容や苦労した点、成果を発表。各日400人を超える聴講者による投票を行った結果、大会1日目の優秀事例に贈られる「杉山友男賞」にトヨタ自動車株式会社、大会2日目の優秀事例に贈られる「大野耐一賞」にダイハツ工業株式会社が決定しました。

杉山友男賞
トヨタ自動車株式会社
本社テクニカルセンター ボデー統括部 ボデーCAD課 GL 伊藤 敦志 氏
「取り戻せ!『技能系らしさ』~勘違いサークルの成長記録~」

トヨタ自動車_伊藤氏

トヨタ自動車本社テクニカルセンターは、企画・デザインから設計、試作、実験まで、自動車の開発を担っている。伊藤さんは車両のボデー設計領域に所属し、設計情報や性能、生産要件を3Dデータ化するCADオペレーターのGL(グループリーダー)。伊藤さんは入社18年、一貫してバックドアを担当している。前工程のデザイン部でつくられた車の表面だけのデータに、補強や部品を取り付ける穴などを書き足して後工程に渡し、そこで正式図面が製品図となる。
これまで、設計者の指示を素早く製図することを命題としてきたが、新しく着任した課長から、「技能系らしさ」「ワークにつくり手の魂を込める姿」が求められるように。

そのような折、伊藤さんは新任リーダーとして参加したお客様相談センターでの研修で、お客様の気持ちで考えること、ご指摘内容を販売店で実際に確認すること、新機構や新構造を学び続ける姿勢を目の当たりにする。

そうした視点で自分の職場を観察してみると、中堅スタッフは仕事のスピードを重視するあまりお客様第一の視点が抜け落ち、若手スタッフはCAD画面で何でも想像できると現地・現物で行動しない、ベテランスタッフにいたっては、新しいことは若手に任せ、自分たちは現状維持でいたいとチャレンジを敬遠する、という状態。
そこで、第1段階で「中堅はお客様目線で考える」、第2段階で「若手は工場で学ぶ」、第3段階で「ベテランは技能の幅を広げる」という目標を立てて小集団改善活動(QCサークル活動)を展開。

まず、中堅スタッフが図面を描いたバックドアの形状が、実際の車では使用感に影響があることを指摘した。「何気なく図面に引いた一本の線が、お客様の迷惑になることもある」と気付いた彼らは、図面を改良し、荷物を圧迫する原因となっていた荷室構造を解消することができた。
次に、若手スタッフに、塗装で生じる液ダレ不良の改善を任せた。工場の塗装ラインで原因をさぐり、実際に不良が発生したバックドアを徹底的に調べさせた。中堅スタッフからのアドバイスで、塗料の表面張力で液ダレが発生するという、CAD画面だけでは気づかない着想を得て、バックドアの構造を改善。液ダレを撲滅することができた。
最後に、ベテランには試作車両の雨音を軽減する課題を与えた。はじめは「それは専門部署の仕事」と取り合わなかったが、若手スタッフがベテランを試験場へ連れ出したことで前向きな気持ちが芽生える。ベテランならではの社内人脈を駆使して情報収集し、雨音の測定と波形グラフを解析。これをバーチャルに評価するための解析シミュレーションをベテラン、中堅が一緒になって行い、試作車の改良につなげた。

この3ステップを経て、単なるCADデータではなく、お客様第一、現地・現物、チャレンジの魂をこめた製図で技能系らしさを取り戻すことができた。また、中堅・若手の働きかけがベテランを動かし、メンバーの成長が職場全体の活性化につながった。

【受賞の感想】

職場のメンバーの協力、工場や実験部など他部署に積極的に出かけて行けた環境、それを認めてくれた自分の上長に受賞を感謝したい。自分を信じてついてきてくれた後輩が、これからの第一線監督者として行動できるよう育てていければと思っています。

大野耐一賞
ダイハツ工業株式会社
本社(池田)京都工場 第2製造部 プレスボデー課 副主任 川村 茂豊 氏
「プレス再生計画~外観品質向上活動から学んだ事~」

ダイハツ工業_川村氏

鉄鋼メーカーから納入されたコイルを切断し、プレス加工するのが川村さんの担当する工程だ。操業40年以上を経た京都工場では、プレスを取り巻く環境も大きく変化した。一部の部品が樹脂に変わっただけでなく、生産拠点が海外や国内の新工場に移ったことによる生産量減少、ライン本数の集約、生産要員が需要のある工場に出向・応援に行くなど、いつしか現場の活気が失われがちに。

自工場が生き残るために、各工場の生産指標を徹底比較した結果、品質が大きく負けていることが判明。そこで、品質でグループNo.1をとるという課の方針が定められる。川村さんはそのテーマリーダーに任命され、外観不良率を1%以下にすべく取り組みを開始した。
髪の毛の直径1/3ほどの僅かな異物でも、金型に入り込むと製品に凹凸が生じる。不良の原因となる異物と侵入経路を地道に特定し、浮遊する埃を管理するセンサーの設置や、ドライアイスを使った新たな金型の洗浄方法など改善を実施。全51項目を良品条件として定め、日常管理に落とし込んだ。その結果、不良率約半減の成果をあげたが、目標数値には及ばず、改善は暗礁に乗り上げてしまった。

そんな時、格納棚の防塵カーテンが開きっぱなしで材料の表面に埃がついていると上長から叱責される。決めたはずの日常管理が守られていないという現実に直面し、意識改革を最優先に進めなければと思いを新たにした川村さん。

自主性を高めるための仕掛けとして、川村さん独自の4か条を制定。一つめは、「価値観を共有し、意識付けのための仕掛け」。朝礼の単位を組ごとから全体一斉に変更し、担当者が直接、思いを込めて情報を伝達することで、スピードアップと一体感の醸成につながった。
二つめは、「我が事として考えるための仕掛け」。みんながその気にならない、他人事として捉えているといった停滞ムードを払しょくするために、一人ひとりに課題と役割を与えた。自分の活動成果を報告する場も設けたことで、達成感を得られるようになった。
三つめは、「無関心は罪・即行動」。お客様の声や、プレスの品質が車両の品質に及ぼす影響を教育する品質道場を開設。品質向上とお客様満足の重要性に改めて気づくきっかけができた。
四つめは、「楽して達成感なし」。改善や教育の基本である4S(整理・整頓・清潔・清掃)を率先垂範で示すため、誰よりも早く出社して職場を清掃していると、その輪が職場全体に広がっていった。それでも、人がライン内で行っている材料の検査の際、埃が進入してしまう。ラインの外から検査できるシステムを作ろうというアイデアがメンバーから自主的に出され、その実現により異物付着量は激減した。

こうした仕掛けや改善を繰り返した結果、メンバーに自覚が芽生え、品質の日常管理が守られる体制へと変わった。活動を始めて1年が経過する頃には、年度目標を上回る成果を上げることができた。

【受賞の感想】

改善活動を進めるなかで、思うように成果が出ない状況に『自分のやり方は本当にこれで良いのか?』という葛藤もあり、断念しようと思ったこともありました。上司やメンバーの支えがあって、なんとかやってこられたというのが正直な思いです。今回、賞をいただけたことで私だけでなく、メンバーにとっても自信につながると思います。これからも自分がやるべきことをきっちり見据えて、愚直に取り組み、夢をもって邁進していきたいと思います。

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