第35回『第一線監督者の集い:名古屋』 最優秀事例賞受賞者インタビュー 株式会社ヤマハビジネスサポート
2017年3月13日(月) ヤマハビジネスサポートにて
(敬称略)
受賞者: | 株式会社ヤマハビジネスサポート 人事業務部 給与グループ 課長代理 杉田 久美子氏 (以下「杉田」) |
同 席: | 株式会社ヤマハビジネスサポート 人事業務部 部長 佐野 泰子氏(以下「佐野」) 同 給与グループ マネジャー 森本 景子氏(以下「森本」) インタビュー:一般社団法人 日本能率協会「第一線監督者の集い:名古屋」事務局(以下「JMA」) |
ヤマハグループ全社、全組織で取り組む改善活動
「YPM(Yamaha Productivity Management)活動」
「YPM優秀賞」受賞から「第一線監督者の集い:名古屋」発表エントリーへ
JMA
第35回「第一線監督者の集い:名古屋」第1日目に、「女性による女性のための職場改善奮闘記 ~私が職場の大野耐一になる!~」をご発表され、最優秀事例賞をご受賞されましたヤマハビジネスサポート 杉田様に、お話を伺います。まずは、ご受賞おめでとうございます。
杉田
ありがとうございます。
JMA
今回、ご参加、ご発表いただいた「第一線監督者の集い:名古屋」は、主に製造業の製造ライン長・工長などの第一線監督者・リーダーの方々を対象とした大会です。
杉田様は、製造業ではないなかで、今回、この大会にご参加されたきっかけや選ばれた経緯などをお聞かせいただけますか。
杉田
私は、当初、海外給与業務の担当をしており、業務改善とは関係の無い立場でしたが、2012年に職場に業務改善活動が導入された時に、課題が多かった海外給与業務にもメスがはいり、そこで業務改善の手法や考え方を知る機会ができました。
その後、職場内の改善リーダーになり、改善に深くかかわり、職場への働きかけをする立場へとなっていきました。
JMA
職場の業務改善活動は、ヤマハビジネスサポート様の社内活動として行われたのでしょうか?
杉田
ヤマハグループでは、「YPM(Yamaha Productivity Management)活動」という全社改善活動が行われていて、私たちの会社、職場でもこの活動に取り組んでいます。
佐野
弊社は、ヤマハ本社はじめ各製造会社などヤマハグループ全社の人事・労務・福利厚生や人材派遣・研修運営、広報・宣伝などを担うシェアードサービス会社として設立されました。ヤマハは製造業が主体ではありますが、弊社のようなシェアードサービス会社でも改善活動にしっかり取り組みながら、ヤマハグループの一翼を担う企業としての立場や存在感を示していきたいと思っています。
JMA
「YPM活動」は、ヤマハグループ全社で、製造現場だけでなく管理・間接部門も含めて全ての職場で改善活動が行われているのですね。
そこで、杉田さんは、職場の改善リーダーになられたわけですが、杉田さんをリーダーに指名されたのはなぜでしょうか。
森本
杉田さんは、性格的にも明るく、元気に、仕事には前向きに取り組んでくれていますし、職場のメンバーともよくコミュニケーションをとっています。また、任されたことは諦めずにやり遂げる責任感がありますので、現場の改善リーダーをお願いしました。
時に、のめりこみすぎるところがあるので、その点は心配しています。
佐野
「改善活動」への取り組みとして、全員参加の形で対応してもらいたいという思いがあり、職場のメンバーからも信頼が厚く、頼りにされている杉田さんであれば、みんなの意見を吸い上げながらまとめていってもらえるのではないかと思い、是非にとお願い致しました。
JMA
日ごろから、職場ではリーダーシップを発揮されているようですね。
今回は、杉田さんの職場での「YPM活動」が社内的に評価されたということでしょうか。
杉田
はい、「YPM活動」のヤマハグループ全社発表大会にエントリーしました。そこで、YPM優秀賞をいただいたことが、今回の「第一線監督者の集い:名古屋」での発表に推薦されるきっかけになりました。
森本
私たち給与グループで働いている社員は全員女性で、仕事と家事を両立させながら、子育てをしている社員もいます。
給与グループは、今回の事例発表の中でも触れていますが、月末・月初、年末・年始と、ある一時期に業務が集中するため残業が慢性化していて、子育てや介護を抱える社員も含めて、社員の皆さんには負担がかかっていました。
そのような状況のなかで、杉田さんが中心となって、メンバー皆で知恵を出し、協力し合いながら、仕事のやり方を見直したことで、結果的に、残業時間の削減につながり、明るく元気な職場に変わって行きました。
佐野
先ほど申し上げましたが、弊社のようなシェアードサービス会社の改善活動がヤマハグループ全社発表大会で評価されたことは、とても嬉しく誇らしいことで、社内の他の部署の方々からも関心を持っていただけたことが本当に嬉しかったです。
JMA
YPM優秀賞のご受賞が、今回の「第一線監督者の集い:名古屋」での発表エントリーにつながったわけでね。「第一線監督者の集い:名古屋」で発表することに決まった時のご感想や職場の皆さんの反応はいかがでしたか。
杉田
「YPM活動」全社発表大会へのエントリーは、自薦によるものだったので、「第一線監督者の集い:名古屋」に発表参加をすることに決まったときも、発表者が自分になることは仕方がないのかな、とは思いました。
ただ、発表の中でも述べていますが、ほんの数年前にようやく業務改善が導入されたばかりの素人職場ですので、このようなレベルの高い発表会では、他の参加者があきれてしまうのではないかと心配でいっぱいでした。
この発表会に参加することになったことを職場に伝えた時は、こういった大会が毎年開催されていることそのものをあまり知られていなかったので、大騒ぎになるようなことはありませんでした。
ですが、たくさんの方に聴講にきてもらえれば、他社の活動やいろいろな考え方や思いに触れるいい機会になるなと、前向きに私は受け止めました。
JMA
この「第一線監督者の集い」では、職場の問題・課題解決や改善活動などを通じて、現場リーダーが、関係する部署や人を説得し、巻き込み、協働しながら、どのように障害や困難を克服していったのか、リーダーの行動力、実践力に、多くの大会参加者が共感されるようです。
今回、杉田さんの自信を持って堂々と発表されている姿がとても印象的でした。実践者だからこその発せられる言葉に力もありました。また、思い悩みながらも諦めずに実直に改善活動に取り組まれているプロセスには、ほとんどが製造現場の方々の参加者にも通じるもの、共感できることが多かったのではないでしょうか。
JMA
ご発表のなかで、「他社の女性職場の活動に衝撃を受け」とありましたが、ヤマハグループ企業や他社様とはどのような交流をされているのでしょうか。
杉田
楽器のヤマハグループ内では日頃から業務面でも交流はあります。関連のヤマハ発動機様とは、シェアードサービスの集まりでお話をするようになったのですが、仕事のやり方が違っていたり、改善活動を積極的に取り組んでいたりと、いろいろな点で勉強になったり、気づかされることがありました。また、同じような悩みを抱えていることもありました。
そこで、一部メンバーだけの交流ではもったいないので、幅広く多く交流できるような機会をつくろうということになり、まずは、気軽に参加できるように仕事後のオフ会・女子会から始めました。他にも積極的に他社を訪問して事務現場の改善活動を見せていただき、今は人の繋がり、ネットワークも広がって、いろいろな面で役立っています。
「改善素人」「女性ばかり」「事務部門」の発表でも、
改善経験の浅い職場やリーダーには参考になることもある!
「自分たちのレベルで発表」が、多くの共感を呼ぶ!
JMA
今回の発表で、一番伝えたかったことは何でしたか。
杉田
今回伝えたかったことは、2つありました。
1つは、リーダーとして職場メンバーを助けたい、助けることができる環境を作りたいという私の想いと、もう1つは、年末調整プロセス改善で職場全体が関わり、1人1人がアイデアを出してそれを実行したことで結果につながったことです。
JMA
その想いを伝えるために何か工夫されたことはありますか。
杉田
私の想いを一方的に述べることは簡単ですが、この素人の発表を聞いてくださった他社の方たちが何か得るものがあるのだろうか、聞いて何かが変わることがあるのだろうかと心配もありましたので、自分の想いがどうしたら伝わるだろうかと悩み、苦労しました。
他社の発表との違いは、私達の発表が「素人」「女性ばかり」「事務部門」ということです。特にそのあたりを意識して、具体的な事例をあげたり、当たり前なことも敢えて発表することで、もしかしたら私と同じように経験が浅い職場やリーダーの方がいれば、参考になるようなこともあるのではないか、と思い、あくまで自分達のレベルで発表するように心がけました。
森本
今回の改善活動は、給与グループのメンバーがアイデアを出し合い大きな成果を生みましたが、それを一番喜んだのはメンバー自身です。今回の発表内では、それが生の声として動画で紹介されたことが良かったと思います。言葉で言うよりも、私たちの職場の様子がリアルに伝わったと思います。
佐野
今回の活動は、グループメンバー全員が何らかの形で係わった結果だと思います。大きな改善というより、こつこつとした改善に全員で取り組み、背伸びしすぎることなく、みんなで参画した様子が少しでも伝わればいいなと感じております。
JMA
自分たちの発表を聴いてください!と気負うのではなく、自分たちの活動事例が、何かの参考になり、役立ってくれれば嬉しい!という奉仕的な姿勢は、事務局として大変嬉しいことです。
得てして、社外の発表会だからと、プレゼン資料や発表演出を過度に凝ってしまうことがありますが、杉田さんの「自分達のレベル」で、自分の言葉で発表されることが、何よりも大切だと思います。
今回、「最優秀事例賞」を受賞されたご感想はいかがでしたか。また、ご自身が受賞した理由(わけ)は何だと思われますか。
杉田
2日間、他社様の発表を聞かせていただきましたが、どの発表も専門的で深く、そして幅広い活動をされていますので、その中でこのような素人部門の受賞で大変恐縮しています。
受賞できた理由は、正直わかりませんが、背伸びしない初心者の発表に温かく共感してくださる方が多かったことや、女性が多い職場への男性リーダー達の関心の高さからではないでしょうか。
JMA
ご受賞が決まってから、上司の方々はじめ職場の皆さんの反応はいかがでしたか。
杉田
森本さんが、受賞直後に職場へ連絡をしてくださり、留守番をされていた職場の方達も大変喜んでもらえたと聞き、明るいムード作りに一役買えたことは非常にうれしかったです。
また数年前に職場で業務改善の指導をしてくださった方達からも、お祝いのメールをいただき、少しだけ恩返しができたこともうれしかったです。
森本
私たちの職場に改善活動が導入されてから、杉田さんや職場メンバーがコツコツと積み重ねて来たことが、このような最高の形で実を結びうれしく思います。
佐野
これまでの自分たちの活動が認められたということを励みに、さらに一歩二歩と歩みを止めないで活動を継続していく使命感のようなものが生まれた気がします。
全員参加で成果を生んだプロセス改善・・・この成功体験の積み重ねを大切に!
「第一線監督者」は、現場と管理職者との橋渡し!
メンバーへの思いはブレない!
JMA
今回受賞されたことで、ご自身のなかで意識されていることなどはありますか。
杉田
今回発表をした年末調整業務のプロセス改善は、職場全体で関わっている大きな業務の1つですが、このプロセスを全員で見直し、意見を出し合って変更し、結果、効率化によって楽になったという成功体験ができました。
素人職場なので、こういった成功体験の積み重ねが大事です。
こういった全体の業務でなく、グループ単位や個人単位の小さな業務でも、業務改善の手法や考え方を取り入れて進めていけるようにしたいので、「改善とは」という啓蒙活動を地道に続けていきたいです。
そして、そういった活動を進めていける方を育てていきたい、育つ環境を作りたいと思っています。
JMA
職場全員で成功体験を共有できたことは素晴らしいですね。
この成功体験をここで終わらせないために、改善活動が継続していくためには、この成功体験者のなかから次のリーダーとなる第2、第3の杉田さんが育っていくことが大切ですね。
「第一線監督者」として、これからの抱負をお聞かせください。
杉田
「第一線」の監督者としては、やはり実際に業務を行っているメンバーと同じ目線でいられることが大事です。その上で、管理職の方との橋渡しも必要なので、どちらの目線も柔軟に受けとめられる考え方が必要だと思います。
目配り、耳配り、声配りを意識したいのですが、自分のことで一杯になりすぎて全くできません。でも、そういうありのままの姿でも「第一線監督者」はいいのかな、と思っています。ただ、メンバーへの想いから行動がスタートすることが多いので、自分の中でメンバーを思う気持ちはぶれないようにしたいと思います。
森本
私たちの職場には、改善を必要としている業務がまだまだ沢山あります。今後も改善リーダーとして職場を引っ張っていっていただきたいですし、若手リーダーの教育にも力を注いでもらいたいです。私も協力しますので、一緒に頑張りましょう。
佐野
一人の力は微力であっても、みんなで同じ方向を向いて取組めば、大きな改善に結びつくということを、メンバーみんなが実感できたのではないかと思います。これまでと同様、こつこつと、そして、より多くの方を巻き込みながら改善活動をさらに盛り上げていって下さい。
JMA
本日は貴重な時間をありがとうございました。
今後のヤマハビジネスサポート様のご発展と、杉田様のますますのご活躍を祈念しております。