第35回『第一線監督者の集い:名古屋』 最優秀事例賞受賞者インタビュー 富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社
2017年3月27日(月) 富士ゼロックスマニュファクチュアリングにて
(敬称略)
受賞者: | 富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社 第四製造部 製造グループ 製造3チーム リーダー 原博幸氏 (以下「原」) |
同 席: | 富士ゼロックスマニュファクチュアリング株式会社 製造管理部 部長 田掘斉氏(以下「田堀」) 同社 第四製造部 製造グループ 兼 製造技術グループ グループ長 西沢浩文氏(以下「西沢」) 同社 第四製造部 製造グループ 製造3チーム チーム長 伊藤哲也氏(以下「伊藤」) 同社 製造管理部 物流グループ グループ長 櫻木善仁氏(以下「櫻木」) 同グループ 玉尾幸男氏(以下「玉尾」) インタビュー:一般社団法人 日本能率協会「第一線監督者の集い:名古屋」事務局(以下「JMA」) |
契約社員から正社員になって3年。
自分を信じてくれた会社へ何か貢献できることをしたい!
「第一線監督者の集い:名古屋」での発表が、さらなる成長のきっかけに!
JMA
第35回「第一線監督者の集い:名古屋」2日目に、「年上メンバーからの信頼を勝ち取れ!〜職場を変えた新米リーダー奮闘記〜」をご発表され、最優秀事例賞を受賞されましたは富士ゼロックスマニュファクチュアリング 鈴鹿事業所 原様にお話を伺います。先ずは、ご受賞おめでとうございます。
原
ありがとうございます。
JMA
今回第35回「第一線監督者の集い:名古屋」に発表参加されることになったきっかけをお聞かせください。また、社内ではどのような業務、役割、活動をされてきたのかも含めてお話しいただけますか?
原
自分の担当業務は大型プリンター機の製造ラインのリーダーをやっています。社外での発表経験は特にありませんが、社内では「C&C改善フォーラム」※であったり、「CIP」※という活動で営業の方が実際に現場を見られて、こうやって作っているんだよということを説明する機会があります。そうした機会に、自分は元々期間契約社員から正社員になったので、そこまでの経緯の話やモチベーションを上げて社員になった話とかをプレゼンすることはありましたが、社外での発表経験は今回が初めてでした。
参加の動機としては西沢グループ長のほうから「「第一線監督者の集い」に参加してみないか?」と薦めていただき、参加することを決めました。自分は派遣社員、期間契約社員、正社員という形で、社員になってからまだ3年ほどしか経っておらず、自分を信じて社員にしてくれた会社に対して、何か返せることはないか、ということを日々業務の中で思っていたのですが、なかなか大きな結果につながっていなかったこともあり、今回の話をいただいた時に、「何とかここで会社に貢献できることをしたい」と思い、今回参加しました。
※【C&C】とは
“Challenge & Change”の頭文字をとったものでその精神は『自ら考え、決定、行動する』であり、自らが能力を高めて自主的な行動を目指す風土作り運動です。特にその中で各個人の能力を高めるためにQC7つ道具、標準三標、品質工学等の改善手法で問題解決を行い、チームを中心とした改善活動の事をC&C活動といっています。
※【CIP】とは
CHUBU REGION INNOVATION PROGRAMの頭文字とったもの。自らがリーダーとして新しい時代の変革をリードしたいと思う若手メンバーが市場や外部環境の情報が提供され、同時に多様な人脈を作ることで自身や自社をより深く理解し、自身の夢やビジョンをより具体的に描く。そして、その実現に向けての支援やアドバイスを受ける研修。
田堀
弊社は、正規社員が今740名ぐらいで、期間契約社員が同数くらいで、全社員1400人くらいです。年に5人くらい社員に登用されるという狭き門なんです。そうした昇格制度を設けています。
JMA
西沢グループ長が原さんをご推薦された理由は何だったのでしょうか?
西沢
原さんは、すごくラインで頑張ってくれていて、見学者の対応とかもやってくれていましたけど、少し伸び悩んでいるところがありまして、一つ上の段階に進んでもらうためにはこういった外部での発表を通じて、もう一回勉強してもらうことも良いじゃないかと考えました。また、社内の道場にも参加してもらいました。こういったことを経験することによって、一つ上のレベルに上がってほしいなという思いで勧めました。
JMA
一つ段階を上がってほしいと言うことで薦められたわけですね。発表に当たっては、いろいろまとめていく中で、自分のこれまでの経験や知識、スキルなどを整理・見える化していくわけですか?
西沢
整理もしなければいけませんし、勉強もしないといけないと思いまして、そのきっかけになればいいと思い、今回推薦しました。
JMA
発表をまとめていく中で、このような上司の意向・期待は感じていましたか?
原
すごくありました。最初決まった時に自分の中ですごく不安でした。この3年間で何をやってきたか頭の中で走馬燈のように出てきて、それをまとめ始めた時に、派遣時代など過去のことを全部振り返りながら、メンバーとのいざこざもありましたし、短い3年間でしたが自分にはものすごく濃い期間でした。今までに、職場には自分より年上の方が結構多いので、気も使って、相手とどう接してよいかを悩んだりもしましたが、今は自分の思ったことを素直に話できますし、考えていることを言い合える仲になれました。
そこまでのことを思い出すことで、かなり振り返りができました。振り返ったことによって自分がこれから何をしていかなければいけないかを数点気づき、今はそれを達成できるように考えています。
JMA
改めてこの3年間を振り返ることで、自分の中でいろんなものが整理できて、課題だとかこれからやっていかなければならないことが、この「第一線監督者の集い」の発表が一つのきっかけとして、見えてきたわけですね。
今回の発表では思うような発表ができましたか?
原
そうですね。自分の中ではベストな発表ができたと思っています。
JMA
発表が決まって、周りの方々の反応はいかがでしたか?
原
正直、上長であるチーム長の伊藤さんには、「やめとけ」と言われました(笑)。伊藤さんは、今までに「第一線監督者の集い」を見に行かれていまして、発表のレベルなどよくご存知なこともあって、社員が1400人いる中でこういったチャンスはなかなかめぐってこないけれども、一度出て良い結果に結びつかなかった場合には次のチャンスがないんじゃないかということを、伊藤さんは気にされていました。
でも自分の中でチャレンジしたいという気持ちもあって、伊藤さんに再度相談したところ、「じゃあ、やってみろ!」ということで、伊藤さんからの承諾をいただきました。伊藤さんからはいろいろなことを教えていただきました。過去を振り返る点もありますが、資料を書いていく言葉であったり、全然知らないことがたくさんあって、質問しすぎて嫌になると思われるくらい聞いて、知らないことを全部教えていただき、かなり助かりました。
JMA
伊藤様はどういったことをアドバイスされたのですか?
伊藤
私は以前、生産革新部門に所属していました。その時に「第一線監督者の集い」で過去にどんな人が参加しているかだいたい理解していました。原さんには、第一線監督者としてある程度経験を持った人が受賞していると話をしました。原さんは3年の経験しかないので、「じゃあ、その3年で第一線監督者として発表することはできるか?」と問いかけみたところ、本人は「派遣社員、期間契約社員、正社員のすべてを自分の中で表現したい、皆さんに聞かせてあげたい!」ということを言ったので、「それなら自分の思うとおりに書いて見ろ!」と書かせたところ、それなりにしっかりしたストーリーが出来上がってきました。これならみんなが共感できるような発表ができるのではということで、もう少し盛り上げたいと思ってフォローだけしました。ほとんど原さん独自の思いが真っ直ぐ表現できていると思います。
JMA
「第一線監督者の集い」は聴講参加されているみなさんの投票によって最優秀事例賞が選ばれますので、原さんの素直な考えや思いがダイレクトに参加者の共感を得たのではないかと思います。
正社員になって、見え方がかわり、気付いたこと ―責任感―
リーダーだからこそ、模範となる作業姿を見せる!
JMA
原さんご自身の中で、期間工の時と正社員になってからと、同じ職場の中で意識の変化はありましたか?
原
すごくありました。責任が一番大きいです。期間工の時はお金を稼げたらいいなというイメージでしたが、ある時から改善活動に力を入れていくなかで、それに対して表彰されたり、いい結果が出たりすると、「やったことは返ってくるんだな」とモチベーションが上がってきて、何とか正社員になろうと思いました。
正社員になってから気づいたことは、自分たちが作業をしている頃、正社員は楽しているというイメージがありましたが、全然違っていました。正社員になって責任を持ってリーダーとしてやりだした時に、見え方が全く変わって、こんなに大変なのか、と知りました。でも責任を持ってやることのやりがいはすごくありました。
JMA
原さんはその責任をメンバーの期間工の方にどのように伝えられていますか?
原
言葉でも伝えています。それから、実際に作業をしている人には、自分が何をしているかわからなくなる瞬間があると思います。そんな時に、自分から作業をやりにいって、リーダーだからこそ作業もしていないとダメなんです。そういった姿をなるべく作業している人に見せるようにして、正社員はこうしてやらなければいけないんだ!ということを見せるようにしています。
JMA
言葉と行動と両面で伝えるということですね。
バンド活動で学んだこと・・・
いいものを作りたいから、意見の衝突を恐れない!
お互い納得いくまで話し合う。
一番大切にしなければいけないこと・・・
作業をしているのは機械じゃない! 人だ!
JMA
今回の発表の中でご紹介されていますが、原さんは、一時期ミュージシャンを目指されていて、今は第一線監督者としてご活躍されています。アーチストを目指されていた自分にどこか踏ん切りをつけて、今はこの会社で活躍の場を見いだされていますが、これも原さんの人生の中で大きな転換期だったと思いますが、どのように心の変化があったのですか?
原
最初のきっかけは本当にお金がなくて、食べる物にも困るほどでした。妻にもずっと助けてもらっていて、これは働かないとマズイと思ってなんとか切り替えました。最初はビジョンも何もありませんでした。ただ、今わかったことは、手段が違うだけでプロミュージシャンであれば演奏してお金をいただくのですが、自分は今、生産現場というステージの上で演奏していると思えるようになりました。その形が違うだけであって、プロフェッショナルとしてミスも許されないし、やることに関しては、全く違いはないなと思い、やりがいを感じます。
JMA
ミュージシャンへの未練は、今はないですか?
原
派遣の時はまだ未練がありましたけど、今は全然ないですね。手段が違うだけで。当時の先輩に言われたことは、『男ならやっぱりナンバーワンを目指さなければならない』ということで、この先でも自分もどんどんステップアップして、止まらずに突き進んで、できるところまで上を目指してやっていきたいと思っています。プロミュージシャンではないけれど、需給担当があったり、調達担当があったり、それがドラムやベースのように一緒にやることでライブをやっている感じだと思います。一緒にしてはダメなのかも知れませんが(笑)。
JMA
バンド仲間のように職場のメンバーといいものを作っていこうという思いは同じなわけですね。
原
そうですね。だからお互いにぶつかります。そこは素直にぶつかろうと思っています。ある時からふとそういうふうにしました。それまでは家ですごく悩んだり落ち込んだりしましたが、やっぱりぶつからないとダメだなと思い、上の人だからどうというのではなく、お互いが納得のいくまで話をしました。バンドで音楽をやっている時も、ぶつかってぶつかって良いものができるということがあったので。
JMA
そういう経験があったからこそ、逆にぶつかることに抵抗がなかったことですか?
原
そうですね。ずっとそうしてきたので、そういう点では学歴はないのですが、そういう経験があったということはスキルの一つだと思っています。
JMA
でも、ぶつかると、原さんから逃げていく人や避けていく人はいませんでしたか?
原
いましたね。今うちのメンバーはほとんど年上で、逆に年上だから受け止めてくれたと思っています。自分のメンバーは7名ですが、これがさらに何百人とかなってくれば、そうはいかなくて、また次のステップで壁が出てくることもあるでしょうね。
JMA
ぶつかった時にどうしても相容れない場合が出てくると思うのですが、そのときはどう解決の糸口を見つけていくのですか?
原
直接電話したりとか、後から気を使って話をしたりします。人によってやり方は多少変えています。いくら自分がラインリーダーだからと言って年上の人に一方的に言うのもおかしいと思いますし、人生の先輩ということを思いながら話をします。ただ、言わなければいけないことははっきり言うようにしています。本当は言いたくはないのですが、それも仕事の一つとして割り切っています。その代わり飲み会や外では人生の先輩と言うことで、敬うようにしています。
JMA
原さんは日頃から各メンバーをよく見ていらっしゃるように感じます。
原
はい、メンバーが少ないということもありますが、自分の中で気づいたことは、作業をしているのは人で、機械じゃないことです。そこで人を一番大事にしなければならないと思っています。
JMA
職場では、原さんはメンバーの方とどういうふうにコミュニケーションをとっていらっしゃいますか?
伊藤
よく見てくれていると思います。職場のほうにもいろいろ仕掛けをしてくれていまして、良いのがたくさんあって、それを他のチームに展開したものもあります。
JMA
具体的にどのような仕掛けですか?
原
中身は改善の対応になるので、話すと時間がかかります。特にコミュニケーションを取っているのが自分のチームだけでなく、需給担当だったり情報プロセス担当だったり、あと物流担当と一緒になって改善を進めています。その中でも言い合いになることもあります。嫌われていないかとも思ったりしますが、納得してないのに「じゃあ、それを入れよう」というわけにはいきません。ただ、一緒に作ったものはお互いが大事にできます。改善も自分のラインだけという目線ではないので、一緒に喜びを分かち合えます。そうした改善内容がいっぱいあるので、紹介するだけでも1日かかります(笑)。
JMA
メンバーだけでなく関連する部門の人たちとも本音で話し合いながらやっていらっしゃるのですね。
原
それが問題になっていることもあります。ある人と、普段はとても仲が良いのですが仕事の話ではいつも最後に言い合いになるので、上の方は仲が悪いと心配されていますが、僕は本音を話していますし向こうも本音で来るので、僕としては良い間柄だと思うのですが、周りが心配しています。
JMA
当の本人同士は、問題に対して真剣なんですよね?だから熱くなれる?
原
そうですね、いつもぶつかっていますね。
JMA
原さんはあまり引かないタイプですか?
原
時と場合にもよりますが、自分が間違っていると思ったら引いてしまいますが、どうしても意地が出てしまいますね。ただ絶対にこれでいったほうが良いと思う場合は、とことん言います。それに対して、向こうがこれなんだとぶつかってきて、自分が折れた時は、向こうの意志が強かったと思っています。
JMA
それだけ日頃から周りのことをよく見ているし、仕事に対する姿勢も真剣に取り組んでいるということでしょうね。
伊藤
非常に頑固なところがあり、自分が納得いくような答えをもらえばその方向に向かっていく。向かい出せば頑固ですから良い方向に向かって真っ直ぐ進んでいきます。だから理解するまでが少し時間がかかりますね。
JMA
第一線監督者の皆さんには、そういういい頑固さがないと、課題や問題をブレークスルーすることができないのではないでしょうか。自分の意志を貫き通す、それを周りに伝播して、共感を得ていくことが必要ですので、そこは大切な一つの要素ではないかと思います。
今回受賞されて、改めて受賞した理由やこの点が自分の中で皆さんに共感してもらえたな、と感じるところはありますか?
原
今回の発表者の方が、自分以外は、40歳以上の方で、経験や知識が多い方でいろんな苦労を乗り越えてきた発表を聞かせていただいて、はっきり言ってすごいなという感じでした。自分が受賞できたことは表現の仕方だったと思います。
JMA
それはどういういった点ですか?
原
例えば楽しいという言葉でも「おっ、楽しい!」と言うと、同じ言葉でも表現の仕方によって伝わり方が全然違うので、大会発表のギリギリのところまで考えていました。最初自分の中で表現できていると思って、上長に見ていただいたら「全然伝わらない」と言われ、それがすごくショックでした。そこから自分の声を録音して聞いたら、これは伝わらないなと思いました。どんな改善や経験をしてきても、表現の仕方で伝わり方が違うなと気づきました。
今回の発表の中では、自分の子どもの話など、いろんな体験や話を入れて、涙を流しながら資料を作ってきましたが、それが言葉一つで全然伝わらないものになって、自分ってこんなに簡単になってしまうのかと思いました。本番の前日のギリギリまで自分の声を録音しながら練習してきました。そういったことも受賞につながったのではないかと自分では思っています。
JMA
歌詞に気持ちをのせるミュージシャンのようですね(笑)。
今回一番苦しい時を支えられた奥様の反応はいかがでした?
原
すごく喜んでいました。そんなに喜ぶかなというくらい喜びまして、受賞後に家に帰ったら豪華な料理が並んでいました。その時ちょうど、西沢グループ長と伊藤チーム長にご馳走していただいてお腹いっぱいだったのですが、妻の手料理を必死になって食べました(笑)。
JMA
受賞後にすぐ奥様に連絡されたのですか?
原
はい。すごく喜んでくれて、妻のお母さんからも連絡が来て、どれだけ言いふらしているのかなと思いましたけど、それだけ嬉しかったようですね。
JMA
奥さん孝行ができましたね。ご家族から喜ばれるというのはどうですか?
原
すごく嬉しいですね。今回、家族のことも発表の中で触れたのですが、自分たちが今までやってきたことは間違いではなかった。そこが僕も妻も嬉しいことでした。
JMA
今回の受賞は、職場の皆さんや奥様、皆で受賞したというお気持ちですか?
原
そうですね。自分がこの資料を作っている間も業務フォローをしてもらったりして、たくさんの方にご迷惑をおかけしたり、支えてもらったりした上での受賞だと思います。自分一人では絶対ここまで行けなかったと思います。みんなで勝ち取った賞だと思っています。
JMA
今回テーマで取り上げた年上のメンバーの方々の反応はいかがでしたか?
原
あまり反応はありませんでした(笑)。期間工の方が多いというのもあり、あまり第一線監督者大会については聞かれていないこともあります。ただ後輩は第一線監督者大会のことをよく知っており、一緒にPC操作もしてくれて、すごく喜んでくれました。今までに一番良かったという評価をもらいました。
リーダーが止まっていたら、そこでおしまいになる!
課題が大変なのではない!
自分の弱さに負けて、課題に取り組まないことはしたくない!
JMA
今回受賞されて、このインタビューも昇格試験の吉報を待っていたのですが。
原
伊藤さんには、昇格試験もあるし、「第一線監督者の集い」の発表もあるという時に、「僕は第一線監督者を優先します」と言いました。「第一線監督者の集い」は1回しかチャンスは来ないのですが、昇格試験はいずれまた来るのでという気持ちでしたが、合格させていただきました。
JMA
おめでとうございます。今回の受賞により評価点が上がったのではないでしょうか。
受賞に加えて昇格されて社内の役割や責任も重くなり、周りの期待も変わってくると思いますが、ご自身の中で何か変わったことや今後への抱負はありますか?
原
今後やっていきたいことは、自分が期間契約から社員になれるということをもっと皆さんに知ってもらって、期間工の方にモチベーションを上げてもらうような環境を作っていきたいと思います。
それから、古川所長が「ずっと進むしかない、止まる暇なんてない」とよく言われているので、自分もその言葉通り止まらずにずっと進み続けたいと思っています。みんなの前に立つリーダーが止まっていたら、そこでおしまいになると思っていますので。正直一番大変なのは、何か課題ができた時に自分に負けたら終わりだと考えています。課題が大変なのではなく、自分の弱さに負けて、課題に取り組まないとか、このままでいいということになるので、それだけはしたくないです。
JMA
原さんがそういうお考えを持っていらっしゃることには、これまでの人生経験や、ご両親や先輩からのお言葉だったりや何かきっかけになるようなことがあったのですか?
原
自分がこれだけ思うことには、先輩や上司などから、いろいろな熱い言葉をいただいて、それでモチベーションが上がってきたことにあります。営業の方に話をした時に、すごく緊張して頭が痛くなってきました。薬を飲んで横になっていた時に、所長がたまたま見かけて、「原、おまえ何を飲んでいるんだ?」「ちょっと頭が痛くなって薬を飲んでいるんです」と言ったら、「薬なんか飲んだらあかん。緊張を越えろ。俺も緊張している」と言われました。そういう熱い言葉がいっぱいあるので、自分も熱くなってしまいます。
JMA
原さんのお話を聞いていると、他の受賞されたリーダーの皆さん同じように、常に前向きであったり、自分の信念をしっかり持っていて、先輩からの言葉を熱く受け止められていますね。
原
泣く時もあります(笑)。厳しすぎて涙が出てきて、トイレで泣いている時もあります。腹が立って悔しい思いもあり、そういうのを乗り越えて「絶対にやってやる」と思いますね。
JMA
負けず嫌いというのはありますか?
原
すごくありますね。
JMA
職場でご覧になっていかがですか?
伊藤
そうですね。常に前向きで熱い思いを持ってやっていると思います。ただ、無鉄砲なところもあります(笑)。
JMA
今はまだまだ無鉄砲なほうがいいでしょうか。
伊藤
まだ頭が柔らかいので、いろんなことを吸収できると思います。昔、うちの会社の社訓には「失敗を恐れず、勇気を持って行動する」という言葉がありましたけど、そのままやってほしいですね。失敗を積んで大きく成長して欲しいですね。昔は失敗してもあまり怒られなかったんです。今はちょっとミスするだけで上から怒られるんです。今は環境が厳しいですが、くよくよしていると何もできなくなるので、そのままやっていってほしいです。
JMA
今はどちらかというと、社員が辞めていくのであまり怒れない会社が増えていますが、真剣だからこそ、きちんと怒れるということですね。
田堀
弊社はかなり工場見学を受け入れており、彼のラインは人気の高いラインです。お客様の中には2〜3度いらっしゃる方もおり、何回来ていただいてもいつも新しいものが見せられるように、これからもやってほしいですね。
櫻木
お客様や営業に彼のファンがいまして、後から連絡取ったりもしていますのでありがたいです。
彼の説明や接客は、何でも本音で話しますので、現場を持っているお客様とは話が合うと思います。
JMA
外部のお客様とも真剣勝負ですね。
原
来ていただいたのに、何も伝えられなかったら意味がないなとの思いもあります。それでもし1台でも購入に結びついたらありがたいし、信頼関係を構築できるように対応しています。
JMA
原さんの人柄は、根は真面目で心は熱いということですね。
原
僕は常に本音で言っているんですけど、毎回嘘じゃないかと言われます(笑)
伊藤
いや、上手く表現・プレゼンできると言うことです。
ものづくり基本道場でも彼は頑張っています。
社内『ものづくり基本道場』で、富士ゼロックスものづくりDNAを伝承!
原
ものづくり基本道場が弊社にあり、そこではリーダーとして必要な教育をしていて、QCDの日常管理や在庫のリードタイムなどいろいろな知識を教えてもらえますが、何よりもすごいのは“熱さ”です。
伊藤
彼だけでなく他の部署からリーダーが集まってきて、挨拶から始まって3日間みっちりやります。彼が9期で今16期です。ゼロックス・プロダクション・ウェイという「道」なので、道場となっています。道場主とか師範代とかがいて、元マネージャーの方で定年再雇用となった経験豊富な人が務めています。
JMA
そこは次の現場リーダーの方々に、富士ゼロックスのDNAを伝承していく場なんですね。そういう場があって、皆さん真剣だからこそ、原さんのように職場で真剣に話し合えるのも、そういった土壌があるからなんですね。
伊藤
最近は“ウチコラ”と言って他部門の職場見学会があります。さらに“モノコラ”として他企業のお客様をお招きし、職場紹介をしていますが、主に彼が説明と質疑の応答をしています。
※モノコラ=モノづくりコラボレーションの略。ウチコラ=社内の従業員向けのコラボレーションの意味。
JMA
常に外部と刺激を出したり受けたりして、切磋琢磨しているんですね。
伊藤
(彼は)そこの最前線でお客様に一番人気のあるプレゼンターです。
櫻木
原さんは期間工時代からプレゼンをしていて、その時に一躍有名になりましたね。
原
プレゼンの時に、「実は僕は期間契約なんです」というと、みんなどっと驚いて受けていました。
伊藤
来られたお客様はみんなびっくりしていましたよ。
JMA
御社の中では期間工であっても正社員であっても、分け隔てなくそこの場の責任者になるのですか?
伊藤
そうですね。原さんの場合特例だったかもしれません。
西沢
本人のヤル気などを見て、上を目指している方にはそういったチャンスを与えるようにしています。
伊藤
QCの全国大会・仙台でも他の部署から期間契約社員2人行ってもらって、1人はブラジル国籍、もう1人は中国国籍のようなメンバーでしたが、“感動賞”をもらってきています。このように期間契約社員の方々にも活躍していただいています。
原
僕も熱い気持ちを持っていますが、いろんな熱い人がいて、社外でQCサークルの賞をかなり取られていて、そういうところも目指していきたいなと思っています。期間工から上がったという環境も同じです。
JMA
次の原さんを目指される予備軍がたくさんいらっしゃるようですね。
原さんは、次はどういうところを目指していくおつもりでしょうか?
原
目指すところは、小田さんという僕の中の憧れの人だったり、太田さんという前回の第一線監督者の集いで発表された方は、改善ですごいことをやられているので、この2人のように自分ももっともっと熱くなって、「第一線監督者の集い」だけではなく、QCサークルの社外活動で優秀賞を取りたいなと思います。ただ、結果も大事ですが、中身のあるもので、職場の方たちと一緒に力を合わせて取りたいと思います。
伊藤
彼の置かれている環境が、今回の発表に上手くはまったのかなと思います。期間工の時から工場見学を担当しており、お客様にわかってもらえるような表現をしてきたので、発表でもそれなりにご理解いただけるのかなと思いました。
西沢
僕は今回、半分は鍛えるつもりで出させたのですが、一番最初に原稿を見た時は、かなり手を入れなければいけないと思っていましたが、結構感動しました。1回目からかなり思いが入っていて、これは頑張ればいけるかなと思いました。
伊藤
3年もらえていなかったので、原くんがもらえなかったらあかんかなと。来年から辞めるかと(笑)。
原
みなさん「えっ、取ったの?」とすごく驚かれました。
JMA
発表の時の原さんの言葉に気持ちが込められていましたので、共感が得られたのだと思います。発表だけでなく質疑応答においても、発表はきれいにまとめたものがありますが、会場から寄せられた質問にどう答えられるか、そこで発表者本人が自分の言葉でどれだけ答えられるかが重要ですね。
限界は自分で勝手に作っている! ~継続は力なり~
“1日1改善”活動で、これまでに7,000件以上を提案!
日々、改善レベルをアップ!
JMA
インタビューの前に、廊下に掲示されている各職場での改善活動の内容や発表風景写真や、いろいろな大会での成果発表など拝見させていただきました。
貴社では、こうした定期的な改善発表や議論の場があるなど、改善や発表することの経験値が、皆さん一人一人がかなり高いのではないかと思います。
櫻木
彼のところは1日1個改善で、1日に1つは必ず改善発表をしているので、これまで7,000件以上にものぼります。改善なので前の改善より、さらにレベルを上げ、類似の改善でも常に上を行く改善をしていますので、お客様もびっくりしています。壁にはいつもびっしり貼ってあります。継続は力なりですね。
田堀
見せるという点も重要で、お客様にも社内にも見せられるようにしています。彼のところは48ヵ月連続で表彰されました。表彰は非常に重要ですね。職場のみんなが「こんなので表彰されたんだ」と。原くんが表彰されたところをみんなが見ているから、僕も頑張ると思う人がいるだろうと。
櫻木
改善内容が通路に貼ってあるので、誰でも見られるし、「こんなのでいいんだ」ということもわかります。それは続けることが大事なので、そこは素晴らしいなと思います。
JMA
そんなに改善提案が出るということは、原さんは、常に現場で目配り気配りをしているわけですね。
原
まだまだあります。一回、所長が確認に来られた時に「もう限界じゃないかと思います」と言ったら、「限界じゃない。まだまだムダが見えている」と話されました。また「限界は自分で勝手に作っている。まだまだあると思ってやりなさい」と言われ、そこから自分の考えも変わりました。
JMA
考えだけでなく、ものを見る視点も変わりましたか?
原
変わりましたね。毎年15%原価改善をしていますが、継続してプラスを出しているので、まだまだできると思っています。
JMA
今後、「第一線監督者の集い」に対して期待することやご意見などがあればお聞かせください。
伊藤
参加した人に聞くと非常に勉強になったということなので、今後も聴講に行かせたいし、機会があれば発表もさせたいと思います。
原
先ほどもお話ししましたが、自分以外が40歳以上の方で、これまでやってきたことが自分にとっても感じるものがあり勉強になりました。
伊藤
同じようなことで困っている人には気づきもありますし、貴重な場だと思います。
玉尾
「第一線監督者の集い」は個人のレベル向上には大変有益な発表会のため重要な発表会なので今後も「第一線監督者の集い」に重きを置きたいと思います。そしてラインリーダー全員に発表してもらいたいと考えています。
JMA
「第一線監督者の集い」というのは、単なる改善活動だけではなく、活動を通じてリーダーとして周りへの働きかけ、よい影響を与えながら現場を良くしていく現場のリーダー、私たちは「現場の経営者」と呼んでいます。その役割や自覚の下でどう活動しているかが大切です。今後の富士ゼロックスマニュファクチュアリング様のご発展と、原様のますますのご活躍を祈念しております。
今日はお忙しい中どうもありがとうございました。